薬供給不足問題、国は早急に対処すべし

現在一部薬の供給不足問題が起こっていることを知っているだろうか?
TV報道にあまり乗っていず、医療関係者しかまともに知らないかもしれない。
高血圧や骨粗鬆症、てんかんの薬などを中心に、現在複数の理由があり、薬の供給不足問題が起こっているのだが
国の対応は遅々としており、患者に不利益が起こっている。



本日3月26日は「パープルデー」といって、てんかんの啓発デーとのことで、今回はこの社会問題について深掘りしてみたく思う。

パープルデー
https://www.purpleday-jp.net/
パープルデー大阪
https://purpledayosaka.org/
てんかん啓発の国際的なイベント。
製薬会社や患者団体、病院など大々的に啓発を行うもので、自治体によっては紫のライトアップをしたりなどもあるようだ。


各社の報道。2020年12月はじまった問題なのに、
2022年3月4日の記事でも不足と問題になっている。現在進行形なのである。

「薬がないと命が…」 医薬品不足で苦しむ患者・家族は
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220114/k10013424161000.html
街から薬が消えた日~もう一つの医療崩壊~
https://news.ntv.co.jp/category/economy/e70eb2f8dc364dda912389c0e6f50c2b
「後発薬ショック」で医療現場が未曾有の事態 「我々も限界」「薬局の信頼にかかわる」薬剤師が語る過酷な現状
https://www.j-cast.com/2021/12/18427405.html?p=all
【詳しく】薬がない…ジェネリックから先発品まで なぜ?
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220120/k10013441381000.html
後発薬不足薬局9割影響 日医工問題背景に
https://www.yomiuri.co.jp/local/toyama/news/20220303-OYTNT50108/

「医療崩壊の始まり」の声・・・薬が足りない!血圧薬やてんかん薬も【news23】




今回の薬不足の原因

こういう事態となったことには複合要因があるとされる。
まず最初のきっかけがジェネリック医薬品メーカーの不正による、営業停止がある。
それによりまずジェネリック医薬品が供給不足に陥り、その影響で既存薬も不足となった経緯。

まず2020年12月に発覚した福井県のジェネリック医薬品メーカーの小林化工の製造工程における不祥事で業務停止処分。悪質な実態が問題になり、厚労省は各社を調査。
すると、ジェネリック大手の「日医工」はじめ、続々製造工程の問題が見つかり、続々業務停止。
結果まずジェネリック医薬品が不足し、それが不足した結果既存薬も不足し、未曾有の薬不足が起こっているのである。

さらに新型コロナ禍で外国からの物流が滞っているための原材料不足問題。
さらには少し前にあった舞洲でのコンテナ火災と、マイナス要素が重なり、酷い供給不足となっており
病院の処方箋を薬局へ持っていっても、薬を処方箋通りの数数揃えられないと断られる事例が多発している。




「総活躍社会」政策との矛盾

国は労働力不足を補うべく、「総活躍社会」を掲げ、女性や高齢者の労働を促す施策を行っており、
これは持病を持つ患者も同じくであり、薬さえあれば日常生活を健常者と変わらず送れ、労働することができるかたが、患者には多いわけだが
薬が無いとなると、日常生活に支障をきたし、働くことができないとなる。

本来2錠飲まねばならないところを薬が得られず1錠にしたために倒れて、大きな怪我を負ってしまったり
仕事中に発作を起こしてしまい、それをきっかけに解雇されるような人もでかねないですし、既に出ているかもしれないわけだ。

これは由々しき事態であり、国家として早急に対策せねばならない話のはずだが、動きがほとんど見られず、報道によれば今後数年不足が続くともあり問題である。

不足問題が露呈してから随分経つのに未だに改善していない。
さらには報道によれば今後数年は改善しないとか。これでいいわけなかろう。



薬が足りないことによる患者の経済的負担影響

今回の薬不足は、健康面での被害だけでなく、経済的にも患者への負担を課すことになることはあまり知られていない。

精神疾患の一部は自立支援医療制度の対象となり、役所へ申請をすれば薬や治療の患者の負担割合が減るが
この制度は申請登録した病院と薬局でのみ負担割合が下がる仕組み。
指定難病なども治療や薬の購入に負担割合が減る制度があるが、これもまた事前に役所へ購入する薬局を申請せねばならない。

その指定薬局で薬を揃えられないとなると、指定病院以外を自らの足で探し回り、3割負担で薬を購入することになり、支援制度の恩恵が受けられないことになる。
慢性疾患では通院、検査となにかと負担ある中、負担軽減の補助制度は患者の助けになっている中、その恩恵を受けられないというのは大きなことである。(なお、登録薬局の変更には役所に申請してから変更なされるまでに時間がかかる)



ではどうすればいいのか?

当方が考えた一案を示したい。

指定難病支援や自立支援医療制度を、指定病院での正規の処方箋があればどこの薬局でも処方してもらえる仕組みが早急に必要ではなかろうか。
これにより流通が滞っているところを、患者が自分で探してなんとかすることができる。

薬はあるところにはあるそうで、患者が多く来るところには足りないとなったり、流通の改善で、根本的解決でないにしろ、随分改善する可能性がある。
患者が自らの足で自由に薬在庫ある薬局を探し利用することができれば、この流通問題への助けになることは間違いない。

そもそもあらかじめ登録した薬局でないといけない理由がなく、改善すべき点ではなかろうか。


しかしこれはあくまで指定難病や自立支援医療の対象となる疾病の薬に限られ、それに当たらないが薬が不足しているものには効果が無い。
同時に根本的対処として、国として原材料の安定供給を行うことも必要であり、
流通も、欲しい人の手元に届く仕組みを整える余地はあるのではないか。
なんにせよ、国がもっと本腰を入れるべき問題に思えるのである。あまりにも動きが遅い。




雑な運営をしてきたジェネリック医薬品推進事業

国は医療費削減のため、ジェネリック医薬品推進を前のめりにしてきたのだが、その実態の雑さが露呈してきている。
この雑な有様が露呈したのが200年12月より続く、ジェネリック医薬品メーカーの日医工らの相次ぐ法令違反事件であり、その後も雑な実情が露呈している。

つい数日前の記事です。

2022年3月24日
後発薬、1100品目で承認書と違い 業界団体が点検結果
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUF245FP024032022000000/

日本ジェネリック製薬協会(東京・中央)は24日、会員企業38社が後発薬の製造方法を点検したところ、全体の約15%にあたる1157品目について、厚生労働省に提出した製造販売承認書と実際の製造工程が違ったり、細かな手順が承認書に書かれていなかったりしたと発表した。

まだこんな雑なことが続々。

予算削りたいのは分かるが、安全性がまず先であろうし、だからといって雑な運用が見逃されていいわけがない。事は命がかかる医療というものなのである。

これは日医工だけの問題に矮小化すべき問題ではなく、監督すべき国の政策の問題でもある。
しれっと記事にしているが、日経もとかく安いジェネリック推進を煽った張本人と言える。

対策として短期的な案を先に述べたが、長期的な話としては、ジェネリック推進よりも、高額な輸入薬頼りのふがいない今の日本の製薬業界の復権、創薬の大改革こそ真に必要な国家プランであろう。
きちんと日本に創薬、製薬を取り戻す。それが必要なのではなかろうか。




創薬の復活は日本の課題

有料コンテンツながらNIKKEI LIVEでまさに、本邦における創薬政策のありかたについて 山中教授の提言をやってるので、見られるかたはぜひに見て欲しい。

山中教授に聞く iPS細胞のいまと科学技術政策のあり方
https://www.nikkei.com/live


日本の薬価を下げるにはどうあるべきかということを語っている。
アメリカ型の研究開発で潤沢な投資で新しい薬を作る成功例が次々登場しているが、残念ながらその結果として、非常に高額な薬が次々登場している。1人当たりの治療費が何百万円何千万円、一回の静脈注射が2億円近い薬まで登場している。
それを日本は輸入をしている結果として、医薬品の貿易赤字は3兆円近い。ここを変えねば国家は持たぬと山中教授は危惧する。その流れを変えるべく、IPS細胞といった日本の技術で日本で薬を作り、「日本で薬価を付ける」このことが非常に大切だと訴える。
もちろん製薬企業は利益を得る必要があるので赤字ではダメだが、その観点から見てもアメリカの医薬品の価格のつけ方は異常と言ってもいい状態ではないかと述べる。


当方も同じ考えである。国内創薬を育てねばならない。
健康保険の負担もこのままでは見直さねばならなくなる。


日本の製薬企業が国産薬を作るのであれば、別に薬価高くて国民皆保険制度で国庫負担したってぜんぜんかまわない。国内で金が循環してるだけだ。
よくこの議論で、皆保険を堅持するのか、混合診療を推進するのかというものがある。維新の会やみんなの党といった新自由主義勢力はずっと混合診療推進でここを破壊しようとしてきた。

【参院選】自・民・共が「皆保険堅持」/各党公約、維新・みんなは“混合診療”
https://healthnet.jp/medipaper/%E3%83%A1%E3%83%87%E3%82%A3%E3%83%9A%E3%83%BC%E3%83%91%E3%83%BC%E7%AC%AC169%E5%8F%B7%E3%80%802013%E5%B9%B47%E6%9C%8825%E6%97%A5/%E6%83%85%E5%8B%A2%E3%83%88%E3%83%94%E3%83%83%E3%82%AF%E3%82%B9%E5%8C%BB%E7%99%82%E3%83%BB%E7%A4%BE%E4%BC%9A%E4%BF%9D%E9%9A%9C%E7%B7%A8-28/%E3%80%90%E5%8F%82%E9%99%A2%E9%81%B8%E3%80%91%E8%87%AA%E3%83%BB%E6%B0%91%E3%83%BB%E5%85%B1%E3%81%8C%E3%80%8C%E7%9A%86%E4%BF%9D%E9%99%BA%E5%A0%85%E6%8C%81%E3%80%8D%EF%BC%8F%E5%90%84%E5%85%9A%E5%85%AC/

そんな二択ではなく、当方は将来的に国産薬と海外薬で負担率を変える案を推したく思う。混合医療で金持ちだけ治療受けられるような社会は違う。問題は超高額海外薬なのである。日本の創薬が衰え、海外依存が進んで代替が無いことが問題なのだ。
今回の新型コロナワクチンにしたって、中国やロシア、インドや台湾まで独自のワクチン開発してるというのに、日本はまったく間に合わず海外製頼み。いかに日本の創薬が劣化しているか露呈したといえよう。
こんなことでは必要な薬を言い値で買うしかなくなる。

国産製薬を復活させないと、財政的にも日本は立ち行かない。これもまた安全保障の問題ともいえる。